山形県 とりとめない熊の話
庄内で山に入るときは、どうしても熊に遭うことを心配してしまいます。地元山岳会の人は「熊?ああ、いるよ。」とこともなげに言います。熊の領域に人が入れてもらうのだと。 ラジオを持ったり、火薬でパンと音の出るおもちゃのピストルを持参したこともあります。熊ベルやホイッスルは必需品です。 これは以前にも書いたことがありますが、グループで行くなら酒田の人と行くべきです。彼らは男女を問わず基本的におしゃべりですからラジオいらずです。 先日、横浜からアイターンして自然写真家として活躍している斎藤政広氏とお会いした時、熊と遭遇したことはないかと尋ねました。間近で出会ったことはないそうですが、遠くを歩く姿を見たことと、強い動物の匂いがして、熊が近くにいることを感じたことがあるということでした。その時は、わざと咳払いなどをして人がいることを気づかせ、熊が離れるのを待ったそうです。 ああやっぱり、と思ったのは、私たちも一度だけ、このきつい匂いを経験したことがあるからです。高瀬峡に初めて行った時です。動物園の熊舎のような匂いでした。連れ合いを心配させないよう「カモシカじゃないか?」と言いながら、わざと大きな足音をたてるようにして通り過ぎました。 こんなこともありました。次男がまだ小学生のころ、夏休みに二人で鳥海山に登ったときのことです。鉾立登山口から賽の河原まで続く尾根道は、左側に奈曽渓谷が落ち込んでいますが、登るにつれて谷が浅くなり、やがてネマガリダケの薮になります。その笹薮の中をがさがさと走り回る音がするのです。はしゃぎながらあちらこちらと走る音から、子犬らしいと思いました。ネマガリダケは雪の重みで地面を這っていて歩くのはとてもむずかしいのですが、タケノコ採りの踏み分け道でもあるのかもしれません。 タッタッタッと走る音が近づき、息子の横で止まりちょっと顔をのぞかせたようですが、すぐにくるりと向きを変えてまた戻っていきました。私からは顔は見えませんでした。 まだ若かったし息子もタフだったので、昼には山頂へ。(今では日帰りでの登頂は無理。もうい頂上を目指す意志もありませんが。)その週はNHKテレビの「昼のプレゼント」で山形県を特集していました。そのため、その時は鳥海山頂(新山といいます)からの生中継中。つまり本当の山頂にはアナウンサーと案内人がいるわけで、私たちはすぐ隣の溶岩塔に登って弁当を食べましたが。 下山途中、例のネマガリダケ地帯を通った時、「そういえば、さっきの、犬だった?顔、見えた?」と息子に聞くと、「わかんないけど、黒かった」とのこと。 よく考えれば、犬の飼い主らしい人はいなかったわけだし、犬がいるなんてありえないことでした。子熊だったに違いありません。(例の匂いは感じなかったけれど。)子熊だったとしてもそれはどうということはありません。しかしそうならば、親が付き添っていたはずなので、そう考えるとぞっとします。攻撃性の低いツキノワグマであっても、子連れの熊は最も危険だといいますから。 熊の話で思い出したことがあります。秋田県にはカモシカを襲う熊がいるというのです。ツキノワが狩りのために大きな動物を襲うという話はあまり聞いたことがありません。 先年、マタギで有名な阿仁にあるクマ牧場でヒグマが脱走して従業員を襲ったという衝撃的な事件がありましたね。経営が赤字で、管理がずさんだったらしい。事件があったから問題になったけれど、それ以前に脱走はなかったのだろうか。それがヒグマだったりして。それに、ヒグマとツキノワは交雑することはないのだろうか。(アラスカでは温暖化の影響でホッキョクグマとグリズリーの交雑がすすんでいるらしい。) 単なる想像で、根拠のある話ではないのですがね。 | |
作成者 |
|
---|
ひとこと数:0
ひとことを発言するには、同好会に参加してください。