グリンデルワルトでいちばんの人気コース

　最初にご紹介した「メンリッヒェンからクライネシャイデック」は、人気のあるお勧めコースであることはまちがいないのですが、今回のコースのうち、とくにフィルストからバッハアルプゼーまでは、グリンデルワルトにハイキングにやってくるツーリストのほとんどが歩くのではないかと思われる、定番中の定番といっていい人気コースです。
　人気の理由はいくつかあるのですが、まず、起伏の少ない歩きやすい道で、歩いているあいだじゅう、近くには高山植物の花々が、遠くには、このベルナーオーバーラント地方の主要な山々のパノラマがずっと眺められること。また、目的地のバッハアルプゼーは、草原に囲まれた小さな湖で、その向こう岸にまわると、水面に倒影を映す美しい山々の姿を見ることができます。これぞスイスの風景という、夢に描いたような場所なのです。ツアーなどでは、そこでＵターンしてフィルストに戻るのが一般的なようです。
　今回は、同じ道を引き返すのではなく、湖のもう少し先まで歩いて、少しきつい登りの道を通って小さな峠を越え、バスがグリンデルワルトからやってくるブスアルプまで歩くコースをご紹介します。バッハアルプゼーまでは１時間弱、ブスアルプまでは３時間強です。

　ハイキングの出発地は、フィルスト（First）です。グリンデルワルトの市街地とは標高差が1100mほどもあるのですが、グリンデルワルトのメインストリートの奥にある駅からゴンドラリフトに乗ってしまえば20分ほど。周囲に展開する絶景に見とれているうちに着いてしまいます。
　フィルストの駅に併設されているホテルにはテラスカフェもあるので、急ぐ旅でなければここでぜひ眺めを楽しんでから出発したいところです。すばらしいパノラマを眺めることができる場所ですから、ここにはハイカーばかりではなく、眺望とお茶や食事を楽しむためにきている人も大勢います。

　フィルストからゴンドラ駅を背にして、左方向に歩き始めます。随所にコースの所要時間窓を記した案内板が立っているので安心です。ここからは、反対方向へも人気のハイキングコースがあります。そちらに向かう人も多いので、うっかりそちらについていかないように。そちらのコースもまた魅力があるので、のちほどご紹介します。

　フィルスト（標高約2167m）からバッハアルプゼー（約2265m）まで、片道１時間弱の道のりです。道の途中では（ほぼ６月中旬から９月にかけて）いたるところに色とりどりの高山植物の群生が見られ、さながらお花畑のあいだに作られた道を歩いているようです。また、運がいいと、野生のヤギやマーモットなどの野生動物と遭遇することもあります。

　フィルストからようやく出発したばかりですが、次回に続きます。

　　写真は上から、(1) ずっとこのような歩きやすい道が続く。(2) グリンデルワルトからフィルストに向かうゴンドラリフト。アイガーなどの山並みが楽しめ飽きさせない。(3) フィルストからの眺望。谷の中の家並みがグリンデルワルト、むこうに見える山はアイガーを中心に左がフィーシャーホルン、アイガーの右に少し見えるのがユングフラウ。(4) フィルストを出てすぐのところにあったハイキングコースの案内板。主なところでは、ブスアルプ２時間40分（最短コース）、３時間（バッハアルプゼー経由）、バッハアルプゼー50分、グリンデルワルト２時間30分など。(5)フィルストを出発してすぐの場所。アイガーとその右にユングフラウ。

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