第52回 シーズー犬「シシ丸」 いつもキミが、そばにいた
待合室で一時間ほど待つ間、私たちはブリーダーさんと一緒にシシの思い出を語り合った。ケータイの写真を見せ合いながら、あの時のシシは、この時はと問わず語りが続いた。
シシの心臓病は遺伝だった。シシより二年ほど前に亡くなったお母さんのツレちゃんも、お祖父ちゃんのムー君も、やはり心臓が悪かった。シシの病気の経過や最後について話をすると、それを聞いたブリーダーさんは、ツレちゃんとまったく同じだと答えた。思い出話をしているうちに、シシと一緒に生まれたメスのメグちゃんが病気になり、輸血が必要になった時は今考えても不思議だね、という話になった。一緒に生まれた兄弟みんなに血を提供してほしい、特に兄弟のなかでも一番体がガッチリしているシシ君にはぜひともと、メグちゃんのお母さんから、たっての申し入れがあり、快く迎えの車にシシを送り出したのはいいのだが、ほかの兄弟は問題なかったのにシシだけがメグちゃんの血液型と合わなくて献血できなかったのだ。どうしてだろう、どう考えても理解できないねと言いながら、私たちがいくら考えたところでそんなことは絶対わからないということだから、この件はそれで打ち切りになった……。結局、メグちゃんは回復することなく、以来、メグちゃんのお母さんとも会うことがなくなった。今でも時々思い出すのだが、ほかの兄妹とシシの血液型が違っていたことが不思議でならない。 そうこうしているうちに住職が現れ、「どうぞ」と声をかけられた。火葬場に向かうと、シシ君は小さな頭の骨になっていた。住職から、これが前足、これは歯ですね、などと説明されたが、胸部の骨がこれだけしっかりしているのは心臓が強かった証拠ですよ、と言われた時には、ムッとして無性に腹が立った。 (心臓病で苦しみ抜いたんですよ。何が心臓は強かったですか、そんないい加減な言い方はやめてください!) 腹を立てたところで、どうにもならない。そんなことはもう、どうでもよかった。 ![]() 四十九日に当たる二月二十五日、ふたたび西信寺に向かい、シシ君を納骨した。従姉の家族も同席してくれた。暖かい日が続いていたが、一昨日は雨、昨日は強風、そしてこの日は底冷えが厳しかった。今年は暖冬といわれ、桜の開花も早いと予報されていたくらいだから、曇天で冬に逆戻りの一日を恨めしく思った。暖かい日が続いたりすると、シシ君も生きていれば散歩も楽だったのにね、などと思うこともある。でも一方では、もう苦しみたくなかったよね、という思いから、安堵に近いものもあった。苦しむシシ君の姿を見ている私たちも、やはり辛かったから。今ごろは新しい世界で、また新しい友だちができて元気に遊び回っていることだろう。 (シシ君、足の爪を切ってあげられなくて、ごめんね) 心のなかで、私はもういちど詫びた。 ![]() コロちゃんのお母さん、チャッピーのお母さん、ムー君のお父さん、後ろ足が片足しかなかったエル君のお父さん、ハナちゃんのお母さん、リョウ君のお父さん、シシと一緒に生まれたメグちゃんのお父さんとお母さん、チャコちゃんのお父さんとお母さん、そしてパピちゃんのお母さん……、苦しそうだったけれども、シシ君は安らかに息を引き取りました。 みなさんのワンちゃんたちは、元気ですか? もしかして、みなさんはブリーダーさんからシシが亡くなった話を聞いているかも知れませんね。ご挨拶にも伺えなくて、申しわけありませんでした。 私もシシが遊んだあの公園に行ってみたいのですが、今はもうシシと一緒に遊べないという思いが強く、まだまだ足が遠のいています。 いずれまた、お会いした時に……。 |
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関雅行さん[1199] | 2012-05-31 13:53:48 |
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卒塔婆までたてるんですね。
ご冥福を祈ります。